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ドライバーで、給料をもらっている人が対象 |
改善基準告示の対象者は「労働基準法第9条に規定する労働者であって、四輪以上の自動車の運転業務に主として従事する者」となっています。 改善基準告示でいう労働者とは、給料をもらって働いている人のことです。ですから一人親方や社長が自分自身で自動車を運転している場合には対象とはなりません。また、給料をもらって働いているドライバーを対象としているわけですから、緑ナンバー、白ナンバーには関係なく、自家用トラックを毎日運転して配達をしている人なども対象になります。 |
運転業務に主として従事する人が対象 |
改善基準告示の対象者は「運転業務に主として従事する者」ですから、職種は「運転手で」あっても月に数回しか乗務しない人や、クレーン車のオペレーターなどは対象外となります。なお、改善基準告示は四輪以上のドライバーを対象としているので、バイク便のライダーなどは当然、対象になりません。 |
改善基準告示が適用除外となる場合 |
@震災などで緊急援助の認定を公安委員会(警察)から受けた場合 |
1995年1月の阪神淡路大震災の際には、多くの緊急援助物資がトラックにより迅速に被災地へ運ばれました。このような、人命救助や災害援助という緊急を要する場合で、公安委員会(警察)の認定を受けているときには適用されません。 |
A火薬、高圧ガス、核燃料などの危険物の輸送で、 届出と運搬計画書が必要な場合 |
危険物の輸送については、さまざまな法律で安全運転なども含めその運搬方法が制限されているため除外されます。ただし、危険物のうち頻繁に行われる石油タンクローリー等の輸送については、すべて改善基準告示の対象となります。 |
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労働時間=所定労働時間+所定外労働時間 (休憩時間を除く)(残業・休日労働) |
労働者の給料(賃金)は、働いた仕事の対価として支払われるものですが、その仕事の量は主として労働時間によってはかられます。では、労働時間とはどういう時間を指すのでしょうか。働いている時間には違いないのですが、労働基準法という法律によって、所定労働時間(休憩時間を除く)に所定外労働時間(残業時間)を合わせた時間と定められています。 |
所定労働時間=休憩期間を除く通常の労働時間 |
所定労働時間は、会社ごとに決めている休憩時間を除く通常の労働時間のことです。 例えば、朝9:00が始業時刻で夕方6:00が終業時刻(昼の休憩が1時間)の場合は、所定労働時間は8時間となります。現在、労働基準法では週40時間労働制を定めていますので、この範囲内で所定労働時間を定めることになります。 |
所定外労働時間=通常の労働時間以上に働いた労働時間 |
所定労働時間とは、上記の通常の労働時間を超えて働いた場合の労働時間のことです。残業(時間外)や休日労働がこれにあたります。なお、法定労働時間(週40時間)を超えて労働させる場合、労働基準法第36条に定める協定を労使間で締結し、所轄の労働基準監督所長へ届け出る必要があります。 |
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拘束時間=所定労働時間+所定外労働時間+休憩時間 |
拘束時間とは、労働時間(所定外労働時間を含む)に休憩時間を合わせた全体の時間を指します。ドライバーの場合、運転時間以外にも休憩をしたり、荷の出荷を待ったり、洗車をしたり、といった時間があります。こうした時間は、当然自分で自由に利用できる時間ではなく、仕事のために必要な時間です。言うなれば会社の指図に従っている時間であり、こうした時間を拘束時間といいます。つまり、拘束時間=所定労働時間+所定外労働時間+休憩時間ということになります。 この拘束時間は、改善基準告示により1日、1ヶ月についてそれぞれ限度がきめられています。 |
1日の拘束時間の限度は、原則13時間、最大16時間まで |
拘束時間は、原則として1日について13時間までとされています。ただし、仕事は日によって運行距離や忙しさが違うのが普通です。そこで、仕事の都合で拘束時間が13時間以内におさまらない場合には、最大16時間まで延ばすことができます。しかし、1日15時間を超えられるのは1週間に2回までとされています。 |
1日の拘束時間の計算方法 |
1日の拘束時間は、始業時刻から連続する24時間で計算します。 例えば、今朝の8時から仕事を始めた場合には、明日の朝8時までが1日となるわけですが、夜の9時(21時)に仕事をおえたとすれば、拘束時間は13時間となります。しかし、仕事の都合で翌日は朝6時から仕事を始めたとすると、6時から8時までの2時間は前日の拘束時間の続きとなります。つまり、13+2=15時間が前日の拘束時間となります。 注意が必要なのは、この2時間については、次の日の拘束時間から除くことができないことです。つまり、6時から始まる24時間(翌日の6時まで)で計算する拘束時間には、この2時間をもう一度カウントします。ですから1日当たりの拘束時間を計算する場合、二重にカウントする時間も出てくることになります。 |
1ヶ月の拘束時間の限度は、原則293時間、 年間6ヶ月までは最大320時間まで |
日々の拘束時間のトータルは1ヶ月について原則293時間までとされています。しかし、会社によっては、年間を通じて見た場合、月々の繁閑の差が大きいこともあります。 そこで、会社と労働組合(労働組合がいない場合には従業員代表)との協定があれば、年間6ヶ月までは最大320時間まで延長することができます。 ただし、1ヶ月の拘束時間を延長する場合には、それ以外の月を短くする必要があります。結果として年間の拘束時間を3,516時間(原則293時間×12ヶ月)以内にしなければなりません。 なお、ここでいう1ヶ月とは、必ずしも1日から月の末日までということではありません。例えば給料の締切日に合わせて当日15日から翌月の14日までといった決め方も認められます。この1ヶ月は暦での1ヶ月という意味ですから、2月1日からであれば末日の28日、閏年であれば29日までの期間となります。 |
1ヶ月の拘束時間の計算法 |
1ヶ月の拘束時間の計算例では、二重にカウントした部分がありましたが、1ヶ月の拘束時間を計算する場合には、これを除いて計算することになります。 実際の計算方法としては、1ヶ月の日数×24時間の合計時間から、1ヶ月の休息期間(勤務終了から次の勤務開始までの時間)の合計を引いたほうが容易といえるでしょう。 |
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勤務終了後、原則11時間以上、少なくとも継続8時間以上が必要 |
休息期間とは、ドライバーが自由に使える時間として仕事から完全に解放された期間を指します。具体的には、拘束時間と次の拘束時間との間の自由な時間のことで、休憩時間や仮眠時間は仕事こそしていませんが、仕事の途中で与えられるものであり、会社の命令が届く状態にいるものとされます。これに対して休息期間は、本人の意思で使える時間であり、睡眠や家族との団らんなどに使える時間です。「休息期間」は改善基準告示固有の用語で、ドライバーの疲れを取り、次の運行が安全に行われるよう交通安全や労働災害の防止を目的に定められており、勤務終了後、原則11時間以上、少なくとも継続8時間以上の休息期間が必要です。 なお、車両内ベットでの休息も、仕事から完全に解放され、駐車場が確保されている場合には休息期間として認められます。 |
分割休息の場合は、1回4時間以上、合計10時間以上が必要 |
しかしながら、トラック運送の仕事ではそのとおりにできない場合もあります。例えば、長距離運送の場合、交通渋滞や荷主の都合などにより計画通り休息できないことも考えられます。そこで、例外的な措置として分割休息が認められています。 これは、仕事から完全に自由になる4時間以上のまとまった時間があれば、休息期間として認められるというものです。しかし、分割休息の場合、連続で8時間の休息をとるのに比べると、疲れや睡眠をとるのに必ずしも十分とは言えません。そこで、2分割休憩の場合には、1回が4時間以上で、しかも合計が10時間以上でなければなりません。例えば、4時間の休息と6時間の休息とする場合や、5時間と5時間で10時間の休息とする場合がこれに当たります。 また、分割する場合、必ずしも2回である必要はなく、3回に分割する場合は、4時間を3回で12時間とする休息も認められます。 |
分割休息が認められるのは2ヶ月のうち1か月分まで |
分割休息が認められるといってもトラック運送の実情を踏まえての特別な取り扱いですから、なるべくその回数は少なくなるように勤めなければなりません。そのため、「一定期間の勤務回数の2分の1」が分割休息で取り扱える限度だとされています。一定期間は最高でも2ヶ月とされていますから、2ヶ月の勤務のうち1ヶ月分の勤務について、分割休息が認められます。 |
休息期間には勤務と勤務とを区分する意味も |
休息期間には勤務と勤務とを区分するという意味もあります。例えば8時に出勤して正午まで働き、その後22時まで10時間の休息期間をとってから、22時に再び出勤して朝8時まで勤務し、その日は帰宅して仕事をしなかった場合には、朝と夜の勤務の間に8時間以上の休息期間があるので、朝と夜の勤務は別勤務ということになります。 |
休息期間と休日 |
ところで、休日は休息期間とはどう違うのでしょうか。 休日は、労働から解放され、1週間の仕事の疲れを取り、レジャーを楽しむなど自分の生活のために使う日であり、普通の場合、暦日の1日(午前0時から24時までの24時間)を指します。 しかし、ドライバーの場合は日をまたがって仕事をすることも多くあります。例えば、明け方3時に仕事が終わったとしても、その日は3時間労働しているので暦日の1日の休日にはなりません。そこで、ドライバーについては「休息期間に続く24時間」で1つの休日とすることが認められています。なお、この場合の休息期間は24時間の前でも後ろでも構わないことになっています。 ですから、普通は8時間以上連続した時間が1休息期間となりますので、8+24=32時間が休日の最低時間となります。しかし、休息期間については分割休息という取り扱いがありますので、4+24=28時間となってしまうことも考えられます。これでなかなか休んだという気持ちにはなりませんので、最低でも30時間とすることが改善基準告示で定められています。 ところで最近は、週休2日の会社が増えてきましたが、2日目の休日の時間数はどうなるのでしょうか。この場合には24時間でよいことになります。ですから1日目の30時間に24時間を足した54時間で2日連休とすることができるわけです。 |
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運転時間については、交通安全の観点からも改善基準告示で制限を設けています。運転時間が長くなると、目や体の疲れもたまり、注意力も落ちます。その結果、事故に結び付くこともあるからです。 |
1日9時間、1週44時間までが限度 |
では、改善基準告示において運転時間はどのように制限されているのでしょうか。1日(24時間)について運転時間は9時間までとされています。ただし、この9時間というのは2日間の平均で見てよいので、2日間で18時間までの運転となります。ちなみに、この2日間というのは、その日の前日あるいは翌日の平均運転時間が9時間であればよいとされています。 また、1週間あたりの運転時間は44時間に制限されています。この場合も、2週間の平均で見てよいことになっており、つまり2週間で88時間までしか運転できないということです。 |
連続運転時間は4時間までが限度 |
1日の運転時間のうち、連続して運転できるのは4時間までに制限されています。4時間を超える運転時間については、この間に休憩や荷役など運転をしない時間を30分以上とることが必要です。この運転をしない時間を非運転時間といい、この非運転時間は、必ずしも休憩である必要はなく、また30分間をまとめてとる必要もありません。ただし非運転時間の30分間を分割する場合、1回が10分以上であることが必要とされています。ですから運転時間と非運転時間との合計、つまり4時間30分を1つの固まりと考えて運行計画・操配を組むことが実際の運用の方法に合うといえます。 なお、ツーマン運行の場合には、トラックが走っているときでも交代運転手は非運転の時間ですから,トラック自体は走り続けてもかまいません。 |
運転時間と労働時間 |
改善基準告示では、運転時間では1日9時間、週44時間までとされていますが、労働時間は平成9年4月から週40時間になっています。また、労働時間はずっと前から1日8時間となっています。これは、どうゆうことなのでしょうか。 1日の労働時間が8時間なのに9時間まで運転できるということは、8時間の労働時間と1時間の残業を使って、9時間運転できるということです。週44時間の運転も同じように、40時間労働と4時間の残業を使うということです。運転時間が11時間かかるような長距離運行が可能なのは、残業との組み合わせで労働時間がそこまで延ばせるからです。 |
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残業、休日労働には労働基準監督署への届出が必要 |
従業員に残業(時間外労働)や休日出勤をさせるためには、会社が労働組合(労働組合がない場合は従業員の代表者)と協定を結んで、その協定を所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。一般にこの協定は労働基準法の第36条に定められていることから36(サブロク、サンロク)協定といわれています。しかし、36協定さえ結べばいくらでも働かせることができるというわけではありません。 「3.拘束時間とは?」のところで説明したように、労働時間と休憩時間を合わせた拘束時間は1ヶ月293時間(仕事が忙しい場合には320時間)までと決まっています。ですから、その月の出勤日数にもよりますが、出勤日数×休憩時間(普通は一時間)と出勤日数×1日の所定労働時間(普通は8時間)との合計を、293(320)時間から引いた残りの時間数が残業、休日出勤ができる時間となります。なお、トラック運送業の場合、休日出勤は2週間に1回までとなっています。 |
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フェリー乗船時間は全て休息時間として計算 H27.9.1改正 |
フェリー乗船中の時間は、ドライバーがトラックから離れて自由にその時間を利用することができます。もちろん船内という限られた空間の中ではありますが、食事をとったり、風呂に入ったりしてドライバーは体を休めることができます。ですからフェリーに乗っている時間は、必ずしも労働時間とはいえません。ただし、乗り降りの際にはわずかな時間ですが、運転する必要がありますが、改善基準告示ではフェリーに乗っている時間のうち全てを休息期間としています。 例えばフェリー乗船時間が8時間を超える場合には、フェリーを降りたときから、新たな勤務が始まることになります。 |
トラックのフェリー特例(改善基準告示の通達)の見直しについて |
これまで、トラックがフェリーを利用する場合、乗船時間のうち2時間を労働 時間とし、残りを休息期間とする取り扱いとなっていましたが、厚生労働省は 平成27年9月1日からトラックのフェリー乗船時間を全て休息期間とする取り扱い になりました。(トラックフェリーの特例) 参考資料 トラックのフェリー特例の見直しについて(国土交通省) |
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1日の拘束時間は20時間まで |
1日の拘束時間は、原則13時間、延ばしても16時間までです。しかし、ツーマン運行の場合には例外的な措置があります。キャビンにベットがあるトラックで、ツーマンで運行する場合には、1日の拘束時間を20時間まで延ばすことができます。しかも、回数に変更はありません。これは、ツーマン運行の場合にはドライバー1人にかかる負担が軽減されるという理由からです。 しかし、ツーマン運行と言っても拘束時間20時間までならいくらまでも延ばせるというものではありません。20時間拘束されていれば、自分の自由になる時間は大幅に減ることになります。ですから、1ヶ月の拘束時間は原則どおり293時間(320時間)までとなっています。 また、トラック運送業界ではあまり例は多くありませんが、あまり例は多くありませんが、隔日勤務を行う場合には特別な取り扱いがあります。隔日勤務は、ある日の昼から翌日の午前中まで夜通しで働いて、その次の日は非番=明け休(あけきゅう)=というような勤務で、主に大都市のタクシーなどで行われている勤務体制です。このような場合には、21時間まで拘束時間を延ばすことができます。ただし、この明け休の場合には、連続20時間以上の休息期間が必要になります。 |
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